貞観十六年(八七四)に開創された醍醐寺は、時の変遷を重ねる中、豊かな信仰のもと、数多くの文化財を伝承しております。今日宗教的にも、文化的にも、社会的にも十分に応える機能を有し、応え続けております。 中でも、塔頭三宝院は、第十四世醍醐寺座主、勝覚阿闍梨(1057~1129)が永久三年(1115)に創立された院家で、時代を通して、座主の住房としての性格を強く持つばかりでなく、真言宗の法流の源泉となっております。 院内は、慶長三年(1598)、第八十世座主義演准后に深く帰依した豊臣秀吉公が、自ら縄張りをし、築造した庭園を中心に殿舎が造られ、各部屋は桃山の美に彩られ、そこから見る庭園は、筆舌に尽き難きものがあります。 開創九百年を迎える今日、二つの茶室(枕流亭、松月亭)と共に庭園の修復を完成し、伝承の二つの法流(三宝院流、恵印法流)の顕彰荘厳を成し、醍醐寺の永世護持に努め、あわせて「生かされてこそ文化財」のもと、社会の願いに応えてまいります。