国宝・重要文化財

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重要文化財

悉曇字母(飛雲紙金銀箔散料紙)

1巻 
指定番号:02506 /重文指定年月日:1998.06.30 (平成10.06.30) 
解説文: 『悉曇字母』は、梵字の字母および合成による文字の作成(切継)の法則を書いたもので、「悉曇章」とも称し、通常梵字の学習に用いられる。  悉曇とは、インドで用いられた書体の一つであったが、のちに中国ではインドの声字に関する事項を総称する語として用いられた。わが国では奈良時代までに梵字が伝来していたが、意識的に学ばれるようになるのは平安時代初期に入唐僧が密教とともに伝えてからである。また切継の作成法を一八章に分類して綴字、合字、連声などの法則を説明したのが「悉曇十八章」であり、悉曇学習の基本書として多く作られた。  体裁は巻子本で、料紙には厚手鳥の子紙を用い、飛雲紙に金銀箔散しの装飾を施している。文字は梵字の正式な書法に使われる木筆によって正確に書かれている。江戸時代の後補素紙表紙には「悉曇字母〈勝覚〉(梵字)」の外題がある。末尾には別紙の素紙が貼り継がれており、表裏に三種の奥書を記している。  本文は一八章のうち第一章を書いたもので、冒頭に成就吉祥を意味する表題がある。次に摩多一二字と体文三五字があり、さらに合成字(切継)一列一二字を順次列記する。奥書には「三宝院権僧正御〈房〉手迹十五枚」と記されており、この三宝院権僧正とは醍醐寺三宝院の開祖である勝覚のことであろう。勝覚筆の東寺三密蔵所蔵『悉曇字母』と筆跡は一致しており、本書は勝覚自筆と判断できる。また文永二年(一二六五)の奥書から、実源は仁和寺御室法助から本書を下賜されたことが知られ、このころには醍醐寺外にあったことになる。永正三年(一五〇六)の奥書では醍醐寺光台院弘宣が伝領しているので、再び醍醐寺に戻っている。  本書は平安時代の木筆梵字書体資料として価値が高く、また筆者を推定できるとともに伝来の過程が具体的に知られて貴重であり、あわせて美麗な料紙を用いる書跡作品としても注目すべきものである。 

悉曇字母 勝覚筆

悉曇字母 勝覚筆

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