重要文化財
5躯
指定番号:03516 重文指定年月日:2004.06.08(平成16.06.08)
解説文:本像は聖宝【しょうぼう】(八三二~九〇九)が延喜七年(九〇七)に造り始め、弟子観賢【かんげん】が引き継いで同十三年までに完成させた上醍醐五大堂の本尊、五大明王像のうちの大威徳明王で、一具中唯一遺る当初像である。
針葉樹材の一木造で、錆下地彩色仕上げ(ほぼ剥落)。六面六臂六足で水牛に乗る姿は東寺講堂像(国宝)と大略一致する。頭体の比例が整い、肢体の構成が伸びやかで、面貌は眉を反転させて吊り上げ、それに沿うように瞼をうねらせ両眼を大きく見開いて、生彩ある忿怒相を示しており、端正でかつ迫力のある像容が表現されている。浅めながら鎬【しのぎ】を立てた各部の彫り口や、第一手前膊まで根幹材より彫出する大きな木取りには時代の特色がよくあらわれている。五大堂と並行して造営された薬師堂の本尊、薬師如来及両脇侍像(国宝)と本像を比較すると、中尊の塊量的な把握とは異質な感もあるものの、両脇侍像とは胸腹の肉取りや裳折返部の形、胸飾を共木彫出する技法(ただし大威徳像は現状、正面側を貼付とする)などに共通点が認められる。また観賢が造営した中院像にあたると推測されている五大明王像(重文)とは目鼻立ちのつくりや両足部との矧目を凸状に造り出す構造などが通じるが、より誇張が少なく節度のある造形がうかがえる。表面に一部やつれがみられるものの部材は脇面や手足に至るまでよく遺っており、当代造像を代表する出来栄えと由緒を有する基準作例として高く評価される。
(備考)ト書:不動明王、降三世明王、金剛夜叉明王の像内に慶長十年、同十三年、七条大仏師康正、康理、康英の銘がある
大威徳明王騎牛像(五大堂)2
大威徳明王騎牛像(五大堂)1