国宝・重要文化財

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重要文化財

絹本著色山水屏風〈/六曲屏風〉

一隻 
指定番号:01891 /重文指定年月日:1989.06.12 (平成1.06.12) 
解説文:山水屏風は密教寺院において灌頂【かんじよう】の儀式に使用される道具の一つである。  山水屏風には、白楽天【はくらくてん】の盧山草堂【ろざんそうどう】を描いたとみられる平安中期の旧東寺本【とうじぼん】(京都国立博物館・国宝)、わが国の風俗・風物を描いた鎌倉初期の神護寺本【じんごじぼん】(国宝)、それに空海とゆかりの深い高野【こうや】・高雄【たかお】の霊境を描いた鎌倉後期の金剛峯寺本(重文)や旧堂本家本(文化庁・重文)などがあり、よく知られている。そのほか山水屏風はほとんど遺例がなく、わずかに旧東寺本の系統に属する本図と旧醍醐三宝院本(五島美術館・重美)や本図と同図様で六扇のうち二扇を掛幅にしたもの(頴川美術館・出光美術館)があげられるぐらいである。  本図は一畳六扇に、のどかな春の景色を背景にして、隠士(第二扇)を訪れる老人(第四扇)、すでに訪問を終えて山中の帰路につく天子の一行(第五・六扇)を描いた招隠図【しよういんず】といえるものである。  本図は人物の面貌や着衣、山岳や土坡、樹葉の重ね塗りなど所々に後世の補筆が認められる。しかしながら当初の渺々と広がる風景を描いた画面構成、側筆を生かした土坡や樹幹の輪郭、筆鋒を使った波頭や水流の線描など温和にして繊細な描写筆致は大和山水図の作風をよく伝えるものである。また第二扇と第五扇に色紙型を置き、各扇は黒漆塗の帖【ふち】を廻し、各扇を紐で結ぶ古い接扇【せつせん】の形式をとどめ(現状は蝶番つなぎ)、裏面を南宋風の古様な四枚綾【よんまいあや】(右第一扇は六枚綾)で表装しているなど、遺品まれな唐絵様山水屏風【からえようせんずいびようぶ】の一つとして貴重である。  制作年代は伝統的な大和絵の作風を継承していることや当初のすぐれた表現描写からみて、鎌倉時代にかかるものとみられる。(写真は次ページ参照) 

山水屏風

山水屏風

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